防護服・防護製品なら原田産業 お役立ち情報 【労働安全衛生法】保護具着用の義務とは? 対象作業・種類・罰則を解説
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【労働安全衛生法】保護具着用の義務とは? 対象作業・種類・罰則を解説

「保護具が必要な作業がよく分からない」「法改正の内容を把握できていない」と悩んでいませんか。化学物質を扱う業務や危険な作業を伴う現場では、保護具の着用が義務づけられています。

本記事では、2024年4月の労働安全衛生法改正の内容を踏まえ、保護具着用の対象作業や保護具の種類、役割、罰則規定などを解説します。

なぜ保護具の着用が義務づけられているのか? 安衛法の目的

2024年4月1日に労働安全衛生法が改正され「皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止」を目的として、保護具の着用が義務づけられました(※1)。

労働安全衛生法は、労働者の命と健康を守るために制定された法律です。改正の背景には、化学物質が原因で発生した休業4日以上の健康障害が年間約400件で推移している現状があります(※2)。

中でも多く発生しているのが、経皮ばく露による皮膚障害です。経皮ばく露とは、皮膚に付着した化学物質が皮膚を通過し、体内に入り込むことを指します。皮膚に刺激性が認められない化学物質であっても、経皮ばく露によって膀胱がんを発症した例が確認されています(※2)。

このような状況を受け、皮膚や眼に健康被害をもたらすリスクが高い化学物質を扱う作業では、不浸透性の保護具を着用することが義務化されました(※1)。明確な有害性が確認されていない物質に対しても、可能な限り保護具を使用するよう努める必要があります(※1)。

労働安全衛生規則第593条では、暑熱・寒冷環境や粉じんなどが発生する場所での作業、病原体の感染リスクが高い業務なども、保護具着用の対象とされています(※1)。

※1参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第五百九十三条”“第五百九十四条の二”“第五百九十四条の三”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

※2参考:厚生労働省.「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 第1版」.“はじめに”.https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001216985.pdf ,(参照2025-05-09).

保護具の着用が義務づけられる主な作業とリスク

前述の通り、労働安全衛生規則第593条・594条第2項では、以下の作業で保護具の着用が義務づけられています(※1)。

【第593条】

  • 暑熱・寒冷環境での作業
  • 高温・低温物体を扱う作業
  • 有害物質を扱う作業
  • 有害な光線にさらされる業務
  • ガスや蒸気、粉じんが発生する場所での作業
  • 病原体の感染リスクが高い業務
  • その他有害な業務

【594条第2項】

  • 皮膚や眼に障害を与えるリスクが高い物質を扱う作業
  • 皮膚から人体に入り込んで健康障害をもたらす可能性がある物質を扱う作業

このような作業で保護具を着用しない場合、視力障害や皮膚障害、皮膚疾患、呼吸器疾患など、労働者の体に深刻な健康被害が生じる恐れがあります。

実際に、亜鉛溶射の吹き付け作業を行っていた労働者4名が、本来必要なエアラインマスクを使用せず、使い捨て式の防じんマスクで作業をしていた事例があります(※2)。本事例では、作業中に4名全員が亜鉛ヒュームを吸い込み、帰宅後に発熱や吐き気などの症状を引き起こしました。

そのため事業者は、作業内容や職場環境に応じた適切な保護具を着用するよう、労働者に指導する必要があります。

※1参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第五百九十三条”“第五百九十四条の二”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

※2参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト.「労働災害事例」.“亜鉛溶射吹き付け作業中、亜鉛ヒュームを吸引”.https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101572 ,(参照2025-05-09).

保護具着用対象の化学物質とは? どのように確認するの?

保護具着用対象の化学物質は、以下の4つに区分されています(※1)。

  • 特別規制対象物質
  • 皮膚刺激性有害物質(744物質)
  • 皮膚吸収性有害物質(196物質)
  • 刺激性・吸収性の両方を併せ持つ物質(124物質)

2024年の法改正で新たに保護具着用が義務化されたのは、皮膚刺激性有害物質・皮膚吸収性有害物質・これら両方の性質を併せ持つ化学物質の計1,064物質です(※1)。

該当物質は、厚生労働省の「皮膚等障害化学物質等に該当する化学物質について」や「皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質リスト」でも確認できます。

また、使用する物質が皮膚刺激性有害物質かどうかは、SDS(安全データシート)で確認できます。SDSとは、Safety Data Sheetの頭文字を取ったもので、化学物質の危険性や有害性などを示すシートです(※2)。購入事業者から提供される他、メーカーのWebサイトからダウンロードできる場合もあります。

SDSを入手したら「危険有害性の要約」と「ばく露防止及び保護措置」で、保護具着用が義務づけられているか確認しましょう。

危険有害性の要約では、以下のいずれかが区分1に分類されていれば、適切な保護具を着用しなければなりません(※3)。

  • 皮膚腐食性・刺激性
  • 眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性
  • 呼吸器感作性
  • 皮膚感作性

例えば「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」が区分1になっていれば、保護めがねなどを装着し、有害物質から眼を守る必要があります。

ただし、区分1と記載がなくても体に悪影響を及ぼす可能性があります。SDSに具体的な指示がない場合でも、念のため保護具を着用して作業しましょう。

ばく露防止及び保護措置では、実際に必要となる保護具が記載されています。保護すべき箇所も明記されているため、事業者は作業前にしっかり確認しましょう。

※1参考:厚生労働省.「皮膚等障害化学物質等の製造・取り扱い時に「不浸透性の保護具の使用」が義務化されます」.“Q:皮膚等障害化学物質とはどのような物質ですか?”.https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001216818.pdf ,(参照2025-05-09).

※2参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト.「SDS」.https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo07_1.html ,(参照2025-05-09).

※3参考:厚生労働省.「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」.“第2項 皮膚刺激性有害物質”.https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001216985.pdf ,(参照2025-05-09).

どんな保護具がある? 種類とそれぞれの役割

作業環境や取り扱う物質によって、必要な保護具の種類は異なります。以下は、代表的な保護具と役割、主な種類をまとめたものです。

保護具の名称役割主な種類
呼吸用保護具(※1)ガス・蒸気・粉じんなどの吸入を防ぐ防毒マスク(半面型・全面型)防じんマスク(使い捨て式・取り替え式)電動ファン付き呼吸用保護具
保護めがね(※2)粉じんや薬剤の飛沫などから眼を保護するゴーグル型スペクタル型顔面保護具
化学防護手袋(※2)化学物質から手を保護する一般作業用手袋溶接用手袋(革製)防振手袋耐切創手袋電気絶縁用保護具化学防護手袋
防護長靴(※2)落下物や物質の飛散などから足を保護する化学防護長靴安全ゴム長靴(つま先にガードが入っているタイプ) 
化学防護服(※2)全身を有害物質から保護する気密服密閉服部分化学防護服
聴覚保護具(※3)作業現場の騒音による聴覚障害を防止する一般的な市販の耳栓イヤーマフ(ヘッドフォン型・保護帽一体型)

このように、保護具ごとで役割や種類が異なります。業務内容や扱う物質、環境に適したタイプを選び、労働者が安全かつ快適に作業できるようにしましょう。

詳しい特徴や使用上の注意については、厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」や「労働衛生保護具」で確認できます。

※1参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト.「労働衛生保護具」.“1.呼吸用保護具(ろ過式呼吸用保護具)”.https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/taisaku/common_PPE.pdf ,(参照2025-05-09).

※2参考:厚生労働省.「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」.“第2節 皮膚障害等防止用保護具の種類”.https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001216985.pdf ,(参照2025-05-09).

※3参考:公益社団法人日本保安用品協会.「聴覚保護具」.https://jsaa.or.jp/%E8%81%B4%E8%A6%9A%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%85%B7/ ,(参照2025-05-09).

事業者の義務|保護具の準備・管理・教育について

事業者は、労働者が安全な環境で作業できるよう、適切に保護具を扱う必要があります。ここでは、準備・管理・教育の3つに分けて事業者の義務を解説します。

準備

事業者は、労働者の人数分の保護具を用意する必要があります(※)。保護具の例としては、有害物質の吸入を防ぐマスクや皮膚・眼を保護する防護服、保護めがね、手袋などです。

保護具を装着しないまま作業すると、重大なけがや事故につながるリスクが高まります。作業内容や環境に合ったものを選び、労働者の安全と健康を守りましょう。

※参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第五百九十六条”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

管理

事業者は、劣化や損傷がない状態で保護具を使用できるよう、定期的な点検と整備を行う必要があります(※)。長期間の使用や不適切な保管によって機能が低下すると、十分な防護効果が得られなくなります。常に清潔な場所で保管しましょう。

また、労働安全衛生規則第12条第6項では、保護具着用管理責任者を選任する必要があると義務づけられています(※)。事業者は、責任者と連携しながら保護具を適切に管理する必要があります。

※参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第十二条の六”“第五百九十六条”https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

教育

事業者は労働者を雇い入れる際に、機械や有害物質の取り扱い方だけでなく、保護具の性能や正しい使い方を教育しなければなりません(※)。

日常的に労働者が適切に保護具を使用できているかを確認し、必要に応じて再教育を行う必要があります。着用の重要性を正しく理解させれば、現場や作業環境の安全性が高まり、労働災害の防止につながります。

※参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第三十五条”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

労働者の義務|正しく保護具を着用することの重要性

労働安全衛生規則第597条では、保護具が必要な作業に従事する労働者は、事業者から指示があった場合、その保護具を装着する必要があると明記されています(※)。

従って、責任者が保護具を付けるように指示したにもかかわらず装着しなかった場合は、規則違反と見なされる可能性があります。

保護具は、労働者の命と健康を守るために必要なものです。手間に感じたとしても、安全確保のために装着しましょう。

※参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第五百九十七条”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

保護具着用義務違反に対する罰則とは?

保護具の着用義務に違反した場合、事業者に対して罰則が科される可能性もあります。

労働安全衛生法第119条では、第20条から第25条までの規定に違反した場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があると明記されています(※1)。このうち第22条は、ガス・粉じん・病原体などによる健康障害を防ぐため、事業者に必要な措置を講じることを義務づけた条文です(※1)。

つまり、保護具を着用していない労働者が健康被害に遭った場合、事業者第119条違反に問われる可能性があります。

また、労働安全衛生規則第12条第6項では、保護具着用管理を選任する必要があると明記されています(※2)。管理者を選任しなかった場合も、刑事罰や罰金刑が科される可能性があるため注意しましょう。

※1参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生法」.“第二十二条”“第百十九条”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057 ,(参照2025-05-09).

※2参考:e-Gov法令検索.「労働安全衛生規則」.“第十二条の六”.https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 ,(参照2025-05-09).

正しい保護具の選び方と使用方法のポイント

保護具は、目的や作業環境に合ったものを選び、正しく使用することで初めて効果を発揮します。まずは作業環境を明確にし、扱う物質やリスクに応じた保護具を選ぶことが大切です。以下で詳しく見ていきましょう。

選定前に作業環境を確認しよう

保護具を選ぶ際は、まず作業環境を確認しましょう。事前に確認しておけば、必要な材質や性能を備えた保護具を選びやすくなります。

例えば呼吸用保護具では、空気中に含まれる物質がガスや蒸気状なのか、粉じんなどの粒子状なのかによって、適切なマスクの種類が変わります。ガスや蒸気には防毒マスク、粉じんが発生する環境では防じんマスクや電動ファン付きタイプを選ぶと良いでしょう(※)。

化学防護手袋を選ぶときは、使用する化学物質に対して劣化しにくく、透過しにくい素材のものを選ぶ必要があります(※)。耐透過性が低いと化学物質が手袋を通過し、皮膚から体内に取り込まれる恐れがあるためです。

その他にも、換気の有無や作業内容、作業時間の長さなども選定時の判断材料です。現場の条件に合わせて保護具を選ぶことで、より高い防護効果が期待できます。

※参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト.「労働衛生保護具」.“1.呼吸用保護具(ろ過式呼吸用保護具)”“2.保護手袋(化学防護手袋)”.https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/taisaku/common_PPE.pdf ,(参照2025-05-09).

使用方法のポイント

業務中の労働災害や健康被害を未然に防ぐには、保護具を使用する際のポイントを押さえる必要があります。

呼吸用保護具(マスク)を着ける際は、顔にしっかり密着しているか確認しましょう。隙間があると有害物質を吸い込み、体調不良や事故につながる恐れがあります。

装着後は、吸気口を手の平でふさいで息を吸ってみて、マスクが顔に吸い付くようであれば密着しているサインです(※1)。フィットテスター(密着性をテストする専用装置)を使って確認する方法もあります。

全身を守る防護服は、呼吸用保護具を装着した後に着るのが基本です。先に着ると、脱ぐときに呼吸器保護具から外すことになり、防護服に付いた化学物質を吸い込むリスクがあります。また、手袋との間に隙間がないよう、強度の高いテープで固定すると密着性が高まります。

防護手袋を使う前は、穴や破れ、傷がないかを確認しましょう。穴が開いていると、物質が皮膚に付着する可能性があります。規定の使用可能時間を超えて使用しないようにしましょう。一度染み込んだ化学物質は、洗っても除去できず、時間が経過すると手袋を通過して皮膚に付着するリスクがあります(※2)。

保護めがねは、顔の形にフィットしているか確認しましょう。隙間があると液体や粉じんが入り込みやすくなります。作業中に保護めがねを外したり、ポケットにそのまま入れたりすると、付着していた有害物質が眼や皮膚に触れる危険性があります。

足に合ったサイズの防護靴を選ぶのも、重要なポイントです。目安としては、靴ひもをほどいた状態で、かかとと靴の間に人さし指が一本入る程度です。立ったときのフィット感も確認しましょう。

聴覚保護具を使うときは、耳の穴がしっかりふさがるよう、反対の手で耳たぶを引っ張りながら装着するのがポイントです(※3)。装着後は、口を開けたり閉めたりして、耳に違和感がないか確認しておくと良いでしょう。

※1参考:一般財団法人中小建設業特別教育協会.「第4章 保護具の使用方法②」.“3 使用方法及び保守点検の方法”.https://www.tokubetu.or.jp/text_daio/text_daio4b.html ,(参照2025-05-09).

※2参考:厚生労働省.「化学防護手袋の選択・使用時の留意事項」.“化学防護手袋の使用上の留意事項”.https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0118/8209/2017825205037.pdf ,(参照2025-05-09).

※3参考:一般財団法人中小建設業特別教育協会.「【第三章】 聴覚保護具の使用とその他作業管理」.“(2)耳栓のつけ方”.https://www.tokubetu.or.jp/text_souon/text_souon3.html ,(参照2025-05-09).

ルールを守り、適切な保護具着用で労働災害を防ごう

労働災害や健康被害のリスクを減らすには、保護具を正しく装着する必要があります。事業者は、適切な管理方法で保護具を扱い、労働者に対して装着方法や選び方などを教育しなければなりません。労働者は事業者の指示に従い、作業環境に合った保護具を着用する義務があります。

法改正の内容や保護具の使い方、選定方法などを改めて確認し、現場の安全性を確保しましょう。

原田産業株式会社では、労働者の健康と安全を確保する高性能な防護服やグローブ、ブーツなどを取り扱っています。安全対策のプロフェッショナルとして、お客さまの作業環境に応じた保護具をご提案します。お気軽にお問い合わせください。